新規就農の振興は日本の農業を救うのか
海外産農産物の輸入や人件費の高騰などで、日本の農業は衰退しています。新規就農は地方で働きたい人のニーズと農業振興の目的が合致したものではありますが、新規就農で生活を維持することの難しさがあり、将来的に日本の農業を振興させるものであるかははっきりしないのが実状です。
新規就農のハードルは意外と高い
新規就農と言うと、都会でのサラリーマン生活をやめ、地方でのんびり…というイメージがありますが、農業による収入だけで生活をするのはかなり大変です。もともと農業を行っている農家でも、専業で生活が成り立っているのは全体の20%ほどです。新規就農者は農作物を作ること自体のノウハウが足りない部分があり、新規就農を成功させるためには独自性を持ったビジネスとして農業を行うことが必要になるでしょう。
農業の収益性が低いことは農業者全体の問題であり、後継者が農業を離れる原因になり続けています。日本の農業総産出額は1984年のピークに比べて3分の2ほどに減少しているのが現状です。働いた分、しっかりと収益が上がる仕組みを構築しないといけません。
ビジネスとしての農業が盛んにならない理由
収益性が低いこともありますが、新規就農には制度の面でも問題があります。
農業はトラクターなどの重機、肥料、倉庫など初期投資が必要になります。数百万円以上かかることは当たり前、場合によっては1000万円近い額になるでしょう。貯金をはたいて現金を用意するか、銀行で融資を受けることが殆どですが、一般のビジネスの場合は株式会社として参入する方法があります。つまり、外部から出資者を募る方法が農業では認められていないのです。参入を難しくする、かつて行われた農家を保護する政策の名残と言えますが、制度の面でも改善するべきポイントがあります。自治体では新規就農者に補助金や住居の提供が行われてはいるものの、旧来とは違うビジネスモデルを構築するには十分な支援とは言えません。
しかし人生の目標としては魅力的
新規就農は難しいと言っても、自然に囲まれて生活できるメリットや人間関係にとらわれないメリット(地域との関係は重要)があります。これから新規就農を考える場合は、定番の作物を畑で作ることではなく、栽培が難しく、作物の単価が高いものを選ぶようにすると良いでしょう。もちろん技術が必要ですので、知識だけではなく、実際に作物を作ったり研究するなどして、商業ベースに出来るかの検証をすることが不可欠です。また販路の開拓も重要で、意外と営業職の経験が役に立ちます。
日本では、広大な農地を使った農業は国土の広さから不可能です。海外に輸出することや国内での販売で海外産に勝つためには、日本でしか出来ない技術を盛り込んだ作物を作ることです。新規就農者の力を合わせれば、きっと日本の農業は収益性のある産業になるでしょう。その力になりたいものですね。